昔は,不動産の登記名義人となった際には,登記済証(=いわゆる「権利証」)を所持することによって,次回の登記に備えていました。
しかし現在は,登記名義人になった者に対して法務局(登記所)から「登記識別情報」が通知されることになって,その「情報」が,いわゆる権利証の代わりをしています。※1
長野地方法務局松本支局管内は,平成18年2月27日から,この「登記識別情報」制度に代わっています。
もう15年も経つのですが,まだまだ一般の方々には馴染みが薄いようです。
一方「権利証」という言葉は皆さん広く聞き親しんでいたようで,ついつい私もこの言葉を使ってしまいます。しかし「権利証」は”書面”を連想させますが,実は”書面”そのものが重要であった時代から,とっくに形のない”情報”が重要な時代へと移り変わっているのです。
馴染みのない方々にとっては,そもそも「登記識別情報」の「情報」って具体的には何なのか,よく分かりませんよね。
この「情報」とは,「アラビア数字その他の符号の組合せ」です。※2
要は,パスワードと考えていただければ結構です。
新しく不動産の所有者となったら,次にその不動産を売ったり,抵当権を設定したりする場合,登記申請の際にその情報(=パスワード)を法務局に提供してくださいよ,という制度なのです。
当事務所では,「登記識別情報」が記載された「登記識別情報通知」という書面を法務局から受け取り,それを依頼者様にお渡ししています。「登記識別情報通知」は,情報(=パスワード)の部分に目隠しが施されていて,目隠しを剥がさないと中身を確認することができないようになっています。
私は登記名義人になった依頼者様に「登記識別情報通知」をお渡しする際には必ず「大切に保管してください」と助言しています。
”書面”より”情報”が重要な時代になったと言いつつも,結局のところ,「登記識別情報通知」という書面を大事に扱っている,というのが実情です。
※1
不動産登記法
(定義)
第2条第14号 登記識別情報 第22条本文の規定により登記名義人が登記を申請する場合において,当該登記名義人自らが当該登記を申請していることを確認するために用いられる符号その他の情報であって,登記名義人を識別することができるものをいう。
(登記識別情報の通知)
第21条 登記官は,その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において,当該登記を完了したときは,法務省令で定めるところにより,速やかに,当該申請人に対し,当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。~略~
(登記識別情報の提供)
第22条 登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には,申請人は,その申請情報と併せて登記義務者(~略~)の登記識別情報を提供しなければならない。~略~
※2
不動産登記規則
(登記識別情報の定め方)
第61条 登記識別情報は,アラビア数字その他の符号の組合せにより,不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定める。
[令和3年8月]