株式会社の取締役である人に、成年後見や保佐が開始された場合、取締役の地位はどうなるのでしょうか。
従来、会社法では成年被後見人・被保佐人は取締役となることができないと定められていました。
会社法 第331条(取締役の資格等)
次に掲げる者は、取締役となることができない。
一 法人
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上~(略)
そのため、取締役が成年被後見人・被保佐人になった場合は、「資格喪失」により取締役を退任することとなっていました。
しかし、この規定は削除(令和3年3月1日施行)されました。
では現在は、取締役が成年被後見人・被保佐人となっても、退任することなく取締役のままなのかと言うと・・・
少々ややこしくなりますので、「成年後見」と「保佐」とで分けて検討します。
まず「成年後見」についてですが、民法の委任契約に関する規定で次のように定められています。
民法 第653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一~二 (略)
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
この通り、受任者が後見開始の審判を受けたら委任が終了すると定められています。取締役は、会社からその取締役としての任務を委任されている関係にありますから(会社法 第330条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。)、その委任関係が終了すれば、取締役は退任するということになります。
一方「保佐」についてですが、保佐開始は委任の終了事由ではありません。したがって、取締役が被保佐人になったとしても、取締役の地位はそのままです。
つまり、まとめると
これまでは
取締役が成年被後見人・被保佐人になる ⇒ 会社法上の資格喪失 ⇒ 取締役を退任
であったのが、
1 取締役が成年被後見人になる ⇒ 会社との委任関係が終了 ⇒ 取締役を退任
2 取締役が被保佐人になる ⇒ 退任しない
ということになったわけです。
[令和4年10月]