不動産の所有者が認知症になって,判断能力を失ってしまった場合は,その不動産は簡単には処分することができなくなります。
不動産を売るという意思を確認することができなくなるからです。
すると,所有者のご家族等の不動産に関係する人たちが,困った事態になることがあります。例えば,所有者が施設に入って,家は空き家になってしまったが,その空き家を処分しようにも・・・,というようなケースです。
このようなケースでは,成年後見制度を利用して,所有者に成年後見人が就き,その成年後見人が不動産の売却の手続をすすめる,という方法が考えられます。
ところで,司法書士として常々「相続登記はお早めに」と呼びかけているのですが,相続登記をせずに放置していたことによって,上記と似た困った事態に陥ってしまうことがあります。
それは,不動産の所有者が死亡しても名義を放置しておいたら,相続人の一人が認知症になった,という場合です。
不動産は死亡した人の名義のままでは売却することができませんし,相続人の一人が認知症では遺産分割もできない・・・。
ここでも,成年後見制度を利用して,相続人に成年後見人が就き,成年後見人が遺産分割をすすめる,という方法が考えられます。
ただし,成年後見人と被後見人が共同相続人である遺産分割は,利益相反行為になりますから,家庭裁判所に特別代理人(共同相続人でない者)を選任してもらい,その特別代理人が遺産分割をすすめることになります(後見監督人がある場合には,後見監督人が遺産分割をすることができます。民法第860条,民法第851条第4号)。
[令和3年4月]