司法書士には,140万円以下か140万円超かという境界がある,という話題です。
訴訟を提起する際には,訴訟の目的の価額(※)について注意しなければなりません。訴訟の目的の価額は,訴訟の申立ての際に納付すべき手数料の金額を算定するために用いられるほか,地方裁判所か簡易裁判所かの管轄が変わってくるからです。
※「訴訟の目的の価額」とは聞き慣れない言葉ですが,原告が訴訟で請求する金額がだいたいこれに当たります。
裁判所法 第33条
簡易裁判所は,次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(~以下略)
このとおり,訴訟の目的の価額が140万円以下の場合は,簡易裁判所に訴訟を提起することになります(金額以外にも管轄を定める規定がありますので,これだけで全てが決まるわけではありません)。
訴訟が地方裁判所又は簡易裁判所のどちらで扱われるかは,司法書士の業務に大きく関係します。
司法書士法 第3条
司法書士は,この法律の定めるところにより,他人の依頼を受けて,次に掲げる事務を行うことを業とする。
一~五(略)
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。~略~
イ 民事訴訟法の規定による手続(~略~)であって,訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
ロ(~以下略)
2 前項第6号から第8号までに規定する業務は,次のいずれにも該当する司法書士に限り,行うことができる。(~以下略)
これらの規定により,大まかに言うと,一部(※)の司法書士は,訴訟の目的の価額が140万円以下である簡易裁判所の民事訴訟について当事者の代理人として業務(=代理業務)を行うことができるのです。
訴訟の目的の価額が140万円を超えて,地方裁判所が管轄となると,司法書士は代理業務をすることができません。
もっとも,全ての司法書士は,裁判所(←簡裁,地裁又は家裁にかかわらず)に提出する書類を依頼者のために作成すること(=書類作成業務)が可能ですので,書類作成業務を通じて本人訴訟(※)を支援することができます。
※「一部」とは,いわゆる認定司法書士のことであり,当事務所の司法書士は認定司法書士です。
※「本人訴訟」とは,弁護士等の訴訟代理人をつけずに本人が訴訟を遂行するもの。
[令和3年10月]